プロに聞く。子どものお絵かきが上達するには?

お子さんはお絵かきが好きですか?子どもが描いた絵を見て「才能あるかも」と期待したり、反対に「絵が下手で大丈夫かしら」と悩むお母さんもいるかもしれません。

今回は、元中学校美術教員で、ぼーだーれすあーとくらぶBACせんだい代表など、仙台市で多彩なアート活動に取り組んでいる菅原道子さんに話を伺いました。

絵が上手・下手は大人の基準で見ない

Q:子どもの絵の上手・下手は、ありますか?

菅原さん:「絵が上手、下手」の基準が、絵を描く対象(モデル)に似ているか、似ていないかになりがちですが、似ているから上手というわけではありません。

まずは手を使い、触ってみることが始まりです。そこにウキウキやワクワク、ドキドキ、元気、素敵、おいしそうといった感情が伝わる表現があれば、形の正確さや色塗りの丁寧さを超えて伝わるものがあります。

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2歳~4歳の子どもは自分が中心です。大好きなお友達がいても、人間関係を作りあげているわけではなく、まずは自分の感情が優先でトラブルも起きます。小学校に入って、少しずつ人間関係を学んで成長していくように、絵の表現も技術も少しずつ変化していきます。

未就学児は、自分の「好き」を色や形に託したり、色や線に勢いがあったり、紙を破いて貼ったり、大好きな物を大きく描いたり。そんなふうに創作に夢中になれる過程を大切に見守ってあげたいですね。大人の基準で見ないで、子どもの発達段階を大切に見守り、温かい励ましの言葉をかけましょう。

正しく描くより、自由に表現する楽しさを味わって

Q:子どもの絵が上手になるには?

菅原さん:最初は色遊びから始めて、好きな色を見つけてもいいのでは。未就学児なら、花の色から色水をつくって遊んだり、砂場でどろんこになったり、絵の具で遊んだり。エンピツで下描きをして、正しい形を描かせようとし過ぎないで、自由に表現する楽しさを体感できるといいですね。思いきり身体を動かしたり、手を使うことが楽しいと思える環境を用意して衣服や手が汚れても、多少は大目にみてあげたいですね。

写真提供/菅原道子さん

現代の子どもたちは、スマホやタブレットの液晶画面の操作にすぐ慣れて、日常的にも接する時間が長くなることがありますが、できるだけ多くの違う感触に触れることは、脳の神経の成長にも大切です。メディア機器の画面を見る時間が長いと、「立体的に物を見る」という目の使い方にも問題が出てくると言われています。

2つの目で自由に焦点を合わせられる目を持てるように、自然の中で遊んだり、自然に触れたりする生の体験から、創造力のようなものが生まれていくと思います。創造力や想像力は、人の成長に大切な要素。 AIとは違う、人間だけが持つ力のもとになるもののひとつがアートだと思っています。

先入観を持たずに子どもの良さを認めて誉める

Q子どもの絵が下手だと悩んでいるお母さんにアドバイスを。

菅原さん:子どもの絵は、丸いお日さまから始まります。最初、クレヨンを握ってぐちゃぐちゃな線を描いていたのが、円を描き、開いていた円が閉じるようになるというふうに、少しずつ進歩します。

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人を描くときは、まず顔を描き始めて、次に手足を描き始めますが、子どもは距離感が分からないので手足がどこから出ているのか、自分の感覚でとらえるので、耳から手が出ている絵を描くことも多いのです。

大人が見て上手な絵だなと感じるのは、小学校の中・高学年ぐらい。小学校に入るころにはだんだん上手に描けるようになりますが、早生まれの子もいるし人それぞれ。未就学児は、使いたい色が使えるのか、夢中で楽しんでいるか、成長する過程をゆったりと見守ってあげましょう。

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Q:子どもの絵をどう誉めたらいいの?

菅原さん:子どもの絵が下手で気になるお母さんもいると思います。バランスが良くないだけで、才能がある場合もあります。誰かと比較しないで、子どもの良さを認めて誉めてあげてください。「この絵はこうでしょ」「こう描きたかったのね」などというふうに、自分の先入観で決めつけたり、説明しないこと。

気に入っていない、否定されると大人の顔色を見るようになり、自由な表現ができなくなってしまいます。不満げな声のトーンは伝わってしまうので、心から誉めてあげてくださいね。

◆◇◆◇◆ 取材協力 ◆◇◆◇◆

菅原道子さん

「ぼーだーれすあーとくらぶBACせんだい」代表、元中学校美術教員、ほか、さまざまな創作活動に取り組む。3人の子どもの子育ては卒業。