障がいのあるなしに関わらず、自己を表現できる「アートの力」

11月に仙台市青葉区の「八幡杜の館」で開催された「楽しい!ボーダーレスアート展」を見学してきました。障害のあるなしに関わらず、何かを表現したいという強烈なエネルギーをもつ子どもたちと親御さんが創作した作品は、大変個性的で興味を惹かれました。

前回のコラムでもお話を伺った「ぼーだーれすあーとくらぶBACせんだい」代表の菅原道子さんに、ボーダーレスアートについて話を聞きました。

コミュニケーションを助けるアート

Q「ぼーだれすあーとくらぶBACせんだい」は、どんな活動をしているの?

菅原さん:ボーダーレスアートとは、障がいのあるなしに関わらない、年齢にもとらわれない創作活動です。 2011年の東日本大震災後に、きっかけがあって「アートの力=生きる力」を伝えたいと「ぼーだれすあーとくらぶBACせんだい」を仲間たちで発足しました。

障害のあるお子さんを持つ親子の創作活動からスタートして、ワークショップや展覧会、アートカレンダーの制作などの活動を続けてきました。年数が経って、子ども達が成人になってからは、親子一緒の余暇活動として楽しんでいます。

2019年1月に、仙台市青葉区東照宮に創作活動の拠点として「アートスペースばく」をオープンし、展示場や活動の場として使っています。子どもから大人までさまざまな人が集い、いろいろな素材を使って表現する楽しさと向き合っています。

菅原道子さん(筆者撮影)

Q障害のある子どもたちと、どんな活動をしているの?

菅原さん:ボールやお手玉で遊んだり、絵の具、粘土、紙、石、木、羊毛など、さまざまな素材を使って自由に創作活動をしています。  親子で時間と場所を共有してアート活動を楽しんでいますし、子どもの作品を元に母親が2次創作を楽しむなど、共同作業になっています。アート作品は、言葉で表現することが少ない彼らのコミュケーションを助けてくれるツールです。

イベント風景(写真提供/菅原道子さん)

創作しながら「その子らしい表現」を引き出す

Q:障がいのある子どもたちの才能、表現力を引き出す上で心掛けていることは?

菅原さん:成長する上でつまずいているのは、どこだろう。何かを描いたり、遊んだりしながら、つまずいているところをゆっくり見つけていきます。発達段階に即した課題、画材、遊びを取り混ぜて、成長を助ける創作活動に取り組むことで、その子らしい表現を引き出していくことを心掛けています。

Q絵を描いたりアート活動をすることで、どんな力が身に着きますか?

菅原さん:夢を実現する力、客観的にものを見る、判断する力。 目には見えないけれど、大切なものを感じる力が身に着きます。また、コミュケーションを育む上でも大切なものだと思います。

展示作品(写真提供/菅原道子さん)

Qこれからの子どもたちに、アートとどう関わってほしいですか?

菅原さん:デジタルが進み、効率が優先されがちな中で、手を動かすことや身体を動かすことはますます必要になってくるでしょう。この世に生まれて、何が好きなのか、何をしたいのか、手を動かしながら、自分で見つけてほしいと思いますし、アートは、自分を見つける実現する力をつけてくれると思います。

展示作品(写真提供/菅原道子さん)

Qこれからやりたいことがあれば教えてください。

菅原さん:健康に生き生きと毎日を過ごす手がかりとしてのアート活動に取り組んでいきたいです。 自分の手から生まれる小さな喜びを、自分のために、誰かのために手渡せる活動時間、活動場所を作っていきたいと思っています。

◆◇◆◇◆ 取材協力 ◆◇◆◇◆

菅原道子さん

「ぼーだーれすあーとくらぶBACせんだい」代表、元中学校美術教員、ほか、さまざまな創作活動に取り組む。3人の子どもの子育ては卒業。

詳細は、facebook「ぼーだれすアートくらぶBACせんだい」へ