植物観察やハイキングなどいろいろ楽しめる「東北大学植物園」

雨の晴れ間に、鮮やかな緑が輝く季節。子どもたちは、植物と触れ合うと、生き物や自然に対する興味や好奇心が芽生えたり細やかな感性が育つと言われています。

仙台市街地からほど近くにある「東北大学植物園」は、緑がいっぱいで、広々として気持ちがいいスポット。「名前は知ってるけど行ったことがない」という人もいるかもしれませんが、せんだいのびすくサポーターの登録施設でもあり、親子でのお出かけにおすすめですよ。

■仙台城を守るための裏山が植物園のルーツ

東北大学植物園は、1958年(昭和33年)に東北大学が研究と教育のために設立した青葉山にある天然記念物指定の自然植物園です。

「1600年に伊達政宗公が仙台城を造営しましたが、この場所がちょうど仙台城の裏山に当たるため、御裏林(おうらばやし)と呼んで、樹木の伐採や一般人の立ち入りを禁止しました。また、城を守るために堀などの施設をつくり、城の水源地としても活用しました。

その後、江戸時代を通じて仙台藩の厳重な監視のもとに置かれ、明治以降も、昭和初期まで一般人の立ち入りが制限されていました。

近隣に人が住んでいると、燃料や、建物をつくるために木を伐ってしまうのが普通ですが、ここではほとんど人の手を加えることがなく、現在まで本来の自然がそのまま残されました。仙台市くらいの大都市で、このような自然の森が残っている例はほとんどなく、大変貴重な場所です」と教えてくれたのは、「東北大学植物園(東北大学学術資源研究公開センター 植物園)」助教の大山幹成先生。

大山幹成(もとなり)先生(写真撮影はすべて筆者)

仙台城御裏林(おうらばやし)をルーツとするこの丘陵地は、現在通称青葉山と呼ばれ、仙台エリアの自然植生であるモミの美林が残されているほか、学術上貴重な動植物が数多く存在することから1972年(昭和47年)には日本で初めての天然記念物に指定されました。現在の本館展示ホールは1996年に新築されたものです。

本館展示ホールから前庭への出口

■町中では見られない動植物と出合える

敷地全体で約52万平方メートル(52ha)と広大な園内ですが、現在は、野生動物(イノシシ)が活発に活動していること、コロナ禍の名残で、エリアを限定しての開園となっています。

植物園内の観察路と植生図。立て看板を撮影

「現在は、川内本館周辺の前庭広場、もみじ庭、ロックガーデン周辺、園路の一部を公開中で少しずつ入園できる範囲を広げていく予定です。本館周辺の観察路も整備されているので小さいお子さんが歩くのにちょうどいいくらいだと思います。また、町中では植林されたような木しか見られませんが、自然の状態の森が見られます。

前庭広場

動物はタヌキやカモシカ、ムササビなどが見られることがあります。最近では、クマは目撃したことはないです。自然が豊かなので野生動物にとってはいい場所ですね」(コメントは全て大山先生)

アヤメ科のカキツバタ(5月下旬撮影)

■ハイキング気分で気軽に楽しめる植物園

東北大学植物園には、中学生の研修や教育研究といった学びが目的の方や、お弁当を持ってハイキングを兼ねて訪れる人、写真を撮りに訪れる人も多いそう。前庭は食べ物の持ち込みが可能なので、天気の良い日は敷物を広げてお弁当を食べてピクニック気分を楽しむこともできます。(ゴミの持ち帰りにご協力をお願いします。また天然記念物に指定されているため、植物の採取や園内の昆虫等を採ることはできませんのでご注意ください)

鳥の声をBGMに木陰でひと休みしよう

本館の玄関ホールや展示ホールでは、園内の自制植物の目録や標本、漢方薬で知られる冬虫夏草(きのこ)の標本、昆虫標本など興味深い資料が多数展示されていて、子どもたちが生きものに興味を持つきっかけになりそうです。

展示ホール

入園料は大人が230円、小・中学生が110円、未就学児無料ですが、現在は限定公開のため無料です。

毎年11月文化の日に「紅葉の賀」というイベントを開催し、野点や楽器演奏、講演などを行っています。また、今年は5月の植物園の日に、植物写真家を講師に招いて、写真ワークショップや講演などのイベントなどを開催しました。イベントや現在見ごろの植物はホームページ等でお知らせしているので、お出かけ前にチェックを。

「仙台市街地から身近で気軽に来れる場所にある町中にはない植物や、絶滅しかけている貴重な植物も含めて、700種類以上の植物が自生しています。季節によって、さまざまな草花が見られるので何度も来園する方もいらっしゃいます。東北大学という名前がついているので敷居が高いと思われがちですが、全くそんなことはありません。誰でも気軽に植物を見て楽しめる植物園です。現在は、限定公開ですが入園無料なのでぜひ来てください」

◆◇◆◆◇◆ 東北大学植物園 施設DATA ◆◇◆◆◇◆

住所 仙台市青葉区川内12-2
TEL 022-795-6760
開園期間 月曜(祝休日の場合はその翌日)、夏季休園・臨時休園がありますのでHPで確認してください。※冬期休園は12月~3月(春分の日の前日)
開園時間 現在は限定公開中のため10:00~16:00(入園は15:00まで)
入園料 大人230円、小人(小・中学生)110円
アクセス (1)地下鉄東西線「国際センター駅」より徒歩12分 (2)地下鉄東西線「川内駅」徒歩12分
駐車場 無料駐車場28台
公式ホームページ http://web.tohoku.ac.jp/garden/